東京渋谷 リブランディング 裏の山の木の子

既存ブランドから業態を変えずブランドシフトする「裏の山の木の子」

目次

プロジェクトの背景と課題

Background & Issue

火鍋という業態は変えずにアップデート

火鍋の専門店へ行った事ありますか?
港区六本木に火鍋の既存ブランドしてクライアントが保持していた高級系火鍋業態から、火鍋メインは変えずに場所もターゲットも変えて新しいブランドとして展開したいというミッション。火鍋自体にポテンシャルはあるので、高級系だけじゃなくカジュアルに食す層にもアプローチしたいというご相談をいただきました。

六本木から渋谷へ

From Roppongi to Shibuya

場所を変え、ターゲットを変え、印象も変える

都内にある火鍋専門店は新宿や池袋などに多く、寿司や焼肉同様の高単価業態であるが、この価格ゾーンで火鍋が選択される機会が圧倒的に低い。火鍋という料理の認知度は高いにも関わらず食べたことある人がとても少ない。さらに専門店ともなると認知度に対して専門店への来店経験は0.1%程と言われています。

今回の移動先は、渋谷にある同社の別業態で営業していた店舗を閉めて業態変更する場所で、渋谷駅から徒歩数十秒の好立地。ただ雑居ビル2Fで渋谷という場所柄、当初は若者をターゲットにいわゆるネオン等で演出する〝映え系〟をイメージしていたが、クライアントの話を聞いていくうちに、違う切り口で攻めた方がいいのでは?と考えにシフトしてきました。

これまでとは違うやり方で

in a different way

ノウハウ先行 → コンセプト先行型へ

大手チェーンとして確固たるブランドをいくつも抱えていたクライアント。
当然の事ながら新規出店や新規ブランドを創出する際にもこれまで培ってきたノウハウやオペレーションスキルを前提に考えていくのが常套手段であるが、今回は敢えてコンセプトを先行して組み立て、そこにノウハウや業態を合わせていくという、まさにブランディングの初動に手掛けるフェーズ同様に世界観を先に作りプロジェクトチームがその世界観をそれぞれ共有し、各々の担当箇所に落としていくというスタイルで進める事になりました。

スーパーフードであるきのこ

Superfood mushrooms

希少なきのこを扱いたい

日本はきのこ生産量世界2位というきのこ生産大国です。カロリーがとても少なく、菌類なので人間の体では消化されずそのまま排出されるため、食べた満足感は高いが低カロリーという夢のようなスーパーフードです。しいたけ、えのき、えりんぎ等スーパーでよく見かけるようなメジャーなきのこは大手数社によって生産されており今回の業態でレギュラーで使用しているピンク色のトキイロヒラタケや鮮やかな黄色のタモギタケなどは需要が少ない為、生産量も少なくあまり流通に乗らない希少な品種です。今回の裏テーマとしては、このきのこの生産の現場状況を少しでも変え、希少なきのこの流通が少しでも安定的にするという壮大なミッションも抱えていました。


ストーリーの設定

クライアント側では、かなり詳細にきのこの成分や現状と生産側、消費側、その未来などを調べており、きのこが持っているポテンシャルや火鍋の種類もモンゴル、重慶、台湾などとスタイルも様々あるなど綿密に調査していることから、やはり〝映え系〟に持っていくのはブランドとして本当に知って欲しい所が伝わりづらいと考え、その専門性を消費者にも押し売りにならないように世界観と合わせて伝えて行くために、今回のフックとなったストーリーとコンセプトを決めていく方向の方が良いと判断しました。

ブランドオーナーの設定

Brand owner

ブランドストーリーからネーミングまでを考える

今回は大手企業が手掛けるチェーン店舗とは違うアプローチを考え、あたかも個人オーナーが自分の生い立ちをバックボーンにブランドを創造していくという、感情的、情緒的な心理をベースに展開していきました。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

小さい頃から食べる事が好きだった。
日本の田舎で育ち、ばあちゃんに育てられた。
いつものご馳走は、裏山の恵みがつまった汁物や鍋料理。
見たことない珍しいきのこに、心が踊った記憶がある。

大人になり、アジアを旅する中で出会った 伝統料理やスパイス使いに驚き、虜に。
現地のマーケットやレストラン、街のやさぐれた屋台、アジアのどこへ行っても必ずあるのが鍋料理。
出汁やスパイスなど、その国の魅力が溢れる鍋は その国の食事の入り口のような感覚だった。

何でも入っている。

その土地や気候、風土を表現するもの、何が入っていてもいい。
それが僕にとっての火鍋。
幼き頃、いつも食べていたばあちゃんの、きのこと野菜の汁料理の記憶が繋がる。

「好きなものはすべていれよう」

幼少の記憶とアジアの経験をアップデートし、やさしいばあちゃんの出汁とアジアの鍋、薬膳、スパイスなど、独自の火鍋を日夜研究し 歴史、国、きのこが融合した火鍋が出来上がった。

日本古来の「鍋を囲む」という優しい時間はゆっくりと流れながらもワイワイガヤガヤと楽しいコミュニケーションが生まれる。
気分や体調によってやさしくも激しくも変化する、質の違う発汗により、毎日でも食べてほしい火鍋。
何でも入っている火鍋を囲み、 誰とでも、なんでも話せる場所を創る。

日本での幼き原体験とアジアの経験から出来上がった
若きオーナーの唯一無二の日式火鍋。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

ストーリーから紡ぐネーミング

バックストーリーからまさに仮想オーナーの体験をそのまま表現したネーミングとして
「小さな頃に裏の山に自生していたきのこの鍋料理の店」=「裏の山の木の子」としました。業態で何を売りにしているかを分かりやすく打ち出し、且つ、同音の連続によるリズムと耳あたりの心地よさも合わせて設計しました。

ネーミングから、受け手である消費者が初めて聴いたときに、皆で考えたブランドの世界観をイメージしてもらえるか、少なくともその方向をイメージしているか。ネーミングはいつも最初の大きな意味を創り出していく大事な項目の一つです。

設定したストーリー、ネーミングなどのコンセプトから各々へ落とし込んでいく

To each department

ここからは各部署へ共有し、それぞれを組み立てていく。フードに関してはそれこそ圧倒的ノウハウとスキルにより、様々な試作がどんどん上がってくる。それはあたかも仮想オーナーが世界中で見てきたアーカイブから創造してるかのように。こだわりのオーナーは、もちろん料理を支え、時には主役にもなる器やカトラリー等のテーブルウェアも抜かりがない。今回も火鍋用の土鍋は作家さんにお願いしたオリジナル。火鍋によくある仕切り鍋とは一線を画すものとなっており、他の器等も、世界を旅してきたオーナーが各国で集めてきた設定のものを採用していきました。

今回用の業態開発としてクライアント側で「菌」の訓読みが「きのこ」だったという事から、既存店で採用していた辛い、痺れるの刺激や味濃い火鍋ではなく、きのこの旨みが存分に抽出されてスープに、生産者から直接仕入れのフレッシュなきのこをを使用し、健康な身体の為に、月に何度でも食べてられる火鍋を再度開発しました。健康的に女性が毎日食べれて、ベースの出汁スープは、おばあちゃんの昔の優しいテイストをイメージして。

ブレないクリエイティブでまとめ上げる

Creative

店内のデザインは仮想オーナーが店舗にいるイメージで、優しく牧歌的でゆらゆらとした照明が心地よく感じさせ、什器なども裏山の木を工夫して造作したような全体的に温もりを感じる意匠としました。

空間を引き締める演出

世界中で集めてきた器や調度品、お店のサインも自分で木を切り出して直接描いて作ったもの。グラスにもオリジナルの木の子グラフィックをあしらい、提供するメインのきのこ等はまるでブーケのようにこんもりと盛られ、サービスする度に、お客様を楽しませる。
ここには書ききれない程のブランドストーリーに沿った小物や演出、アートワーク、ウェブ等々。細かい箇所に注力することで大きなブランドのうねりを作り出し、それが消費者に世の中に伝わっていくといつも考えております。

ブランドストーリーからネーミング、 ロゴデザイン、ツール制作、グラスデザインなどクリエイティブ全般。 内装設計、インテリアコーディネート、 皿・カトラリーのコーディネートや店内装飾、 SNSの企画・運用・プロモーションまで多岐に渡る範囲を担当させていただき、とてもやりがいのあるプロジェクトとなりました。

様々な壁を一緒に走りながら乗り越えていき、クライアントの飲食への愛と、とことんこだわり抜くプロの熱量に 終始感動続きの毎日でした。

私たちは改めて お客様と一緒に未来を描き起きる現象を貪欲に作っていくことが 本当に好きなんだと実感したプロジェクトとなりました。
オープンした店内に たくさんの人が訪れてくれて 良い時間を過ごしている姿を #裏の山の木の子 で毎日見るたびに とても幸せな気持ちになるプロジェクトでした。

業務領域

SCOPE OF
WORK

  • SNSプロモーション
  • VI
  • インテリアデザイン
  • グラフィックデザイン
  • サインデザイン
  • テーブルウェアディレクション
  • ネーミング
  • ブランド開発
  • 内装設計
  • 店内装飾ディレクション
  • 店舗デザイン
  • 撮影ディレクション

SHARE

NEXT CASE STUDY