NEWについて

いつも同じバスで見かける機嫌のよさそうなおじいちゃん。付けているイヤホンからは、ゴリゴリのヒップホップが漏れ聞こえてきた。車窓から外を眺めたら、テレビでよく見るあのモデルが、愛犬とほぼ同じ服装で散歩している。前の席の小学生は、谷川俊太郎ばりの愛のポエムをプリントの裏に書きなぐっていた。人の記憶は、ユーモアとギャップから生まれる。予想の外にあるから脳に残る。予定調和で終わらない現象を、自分たちも作りたいと思う。

愛とは、カフェオレである。すぐ冷めたり、ときに苦かったりする。愛とは、結び目である。強く結べば切れにくいが、引っ張りすぎれば切れてしまう。愛とは、トイレットペーパーである。自分が弱っているときほど、そばにあってほしい。愛とは、微生物である。それがないところには、なにも生まれない。愛をいつも、持っていたいと思う。

お酒の力は本当に侮れない。先日、友人と飲んでいたら、隣の席のジェントルな男性が話しかけてきた。しかも英語だった。普段だったらアイムソーリー。しかし同じ空間で、料理とお酒を楽しんでいる相手なら、肩を組んで一緒にシンガ&ソングできてしまう。大人の嗜みさえ備えていれば、距離感を近づけるのに、こんなにいいアイテムはないと思う。

祖母はいつも、家にある食材を使って最高の料理を作り出してくれた。ある日、彼女は小さな私にじゃがいものグラタンを振る舞ってくれた。見た目は普通のグラタンだったが、一口食べると、口の中にまったりとした甘みが広がった。チョコレートが入っていたのだ。「どうして？」と尋ねると、祖母はにっこりと笑って「新しい体験をしてみただけよ」と答えた。私もビターな笑顔でそれに応え、祖母のクリエイティブな料理を堪能したのだった。

好きなものを身に纏う喜び。ファッションを個性の表現だと言う人もいる。もちろんそれもあると思う。しかし、高級フレンチにビーサン＆アロハで行ったら、きっと立ち入ることもできない。逆にどんなときもタキシードを着ていたら、ジェームズ・ボンドかとツッコミを浴びまくるだろう。相手からどう見られるか？人を喜ばせることができるか？主観と客観を考えることが、ファッションには欠かせない。

明るさは世界を変える。例えば食パンをくわえた同級生と、曲がり角で激しく衝突したとき。イライラして舌打ちするだけじゃ、なにも起きない。あるいは坂道で、買ったリンゴを落としてしまったときもそう。すぐに切り替えて全力ダッシュするからこそ、新しい出会いがそこに待っている。人それぞれ持っている照度は違うはずだけど、自分のスイッチはいつもONにしておきたい。

旅先で、現地の食べものを味わうのは醍醐味の一つだ。いわゆるローカルフードは、場所によってその特徴が大きく変わったりする。だからついつい「本場」とか「ディープさ」を求めてしまう。だが、この間ふと思い出したことがある。そういえば昔友達の家にいったとき、出てきた味噌汁にでっかいカニが入ってたなあ…って。価値観の差っていうのは国境より、家の塀を超える方が大きいこともある。

エンジンふかしまくって、アクセルを全力で踏み込んでたら、どこにもたどり着けない。レースゲームなら壁に当たって終わりだけど、現実なら即クラッシュ。どんなに優れたエネルギーも、適切なハンドリングが必要だ。バイタリティあふれる社長の横に、クールでキレキレな秘書がいると仕事が上手くまわったりする。相反するものを共存させられたら、強いチームになるのだと思う。

同じ楽譜を見ていても、そもそもチューニングがズレていたら、いい演奏なんてできやしない。それは仕事だって一緒だと思う。走り始める前に、対話を重ねる。目線とマインドを合わせる。そこからようやく一歩を踏み出すことができる。人との間ももちろんだけど、世の中との間のバイブス調整も欠かせない。常にハイタッチできるような関係性を保っていたいと思う。